写真

茂三郎さんは、日本に帰ってくるつもりだったらしい。その準備も進めていたという。しかしその直前に、カナダで亡くなってしまう。

 

「茂三郎さんの、お葬式の写真が、うちにもあるはずよ」

奥の部屋に行ってしばらくして、彼女は古いアルバムを抱えて戻ってきた。

尊敬し、敬愛していた従兄弟のお葬式の写真を、茂子さんのおじいさんはアルバムの一番最後のページに貼って、大切に保存していた。

写真の中では小さな教会の前におかれた棺とカナダ人らしき神父を囲んで、大勢の正装した和顔の男たちがこちらを見ている。写真の斜め奥まで果てしなく続く日本人参列者の列が茂三郎さんの人徳を伺わせるようだった。

 

「この写真、スティーブさんも持っていた。サンラファエルの家で見せてもらった。まさか同じ写真をここで見られるとは思っていなかった!」と太郎が驚いて携帯に入った写真をみせてくれた。まったくおなじ写真だった。