下調べの旅

倉敷に着いた私たちは、親の家でゆっくりくつろぐ暇もなく、翌日には尾道に向かった。

 

島の場所はネットで調べた。小さな島だ。フェリーの航路らしきものがあるようだが、車でいけるのか、別の島に車を置いて渡らなければならないのか、わからない。近くの島までは「しまなみ海道」という橋が架かっているらしい。その先は行ってみなければわからない。とにかく行ける所まで行ってみよう。行き詰まったらその時はその時だ。冒険旅行に出かけるような気分だった。

 

倉敷から尾道までは高速で1時間半ほど。いくつかの島をつなぎつつ四国の今治まで続くしまなみ海道にのり、因島(いんのしま)南出口で下りた。瀬戸内の、密に詰まった島だらけの風景はなかなか壮観で美しかった。

 

しまなみ海道はサイクリストたちに人気のある海道らしい。自転車道が整備され、レンタサイクルもあちこちにある。自転車好きの太郎はきらきらした瞳で自転車乗りたちを目で追っている。今にも車を降りて自転車で行こう!と言いだしかねない様子だ。

こんな風景の中を軽快なスポーツ自転車で走ったらさぞかし爽快だろうなあと、自転車乗りでない私でもワクワクした。

 

因島の出口を出ると興味深い看板が次々出てくる。

あ、村上水軍城だって!因島って、海賊の島だったんだ!

あ、ひかるの碁の人!なんだか面白い島だ。

きょろきょろしながら車を走らせる。道路を走っていると、ある建物に、「ポルノグラフィティの出身地!」というさびた看板がかかっていた。

あそうか、それで私はこの島の名前を知ってたのかもしれない。

興味の赴くまま、村上水軍城の資料館へむかう。

 

資料館の窓口にいたおばさんに佐島への行き方を聞いてみた。

入り口に張ってある因島の地図を指し示しながらおばさんがいう。

「島の南側にフェリー乗り場があって、そこから船が出てると思うよ。」

本当に小さな乗り場らしい。

 

少々不安になりつつも一路、唯一の手がかりとなるフェリー乗り場を目指す。