三庄へ

「およめさんをみつのしょうからもらった」という、正月に聞いた茂子さんの言葉をたよりに、三庄の中も少しドライブしてみた。

少し高くなった場所からしまなみを眺める。おばあさんも少女時代にここからこうしてこのしまなみを眺めていただろうか。

三つめの里という意味の三庄(みつのしょう)は、思ったより広かった。少し古そうな通りなどあればと思ったが、造船で潤っているらしく、新しい家ばかりだ。おばあさんに関しては名前以外の情報が少なすぎた。

 

スティーブさんの持ってきた資料によると、おばあさんは写真によるお見合いで茂三郎さんと結婚したらしい。茂三郎さんがカナダに渡ったのは19歳の時。カナダで写真を見て結婚を決める。おばあさんは見も知らぬ男性への嫁入りのため、単身、同じような境遇の人たちと一緒にカナダへ渡ったのだろう。

 

カナダで彼女は豆腐や醤油、味噌を一からつくり、やがて商店を経営していたという。

スティーブさんが新潟で遭遇し、憶えていた「おいなりさん」は、スーパーで売られているお揚げさんから作られていた訳ではなく、彼のおばあさんが慣れないカナダの地で一から作り、娘に伝えた豆腐と醤油から作られていたのだ。