水軍になる

奉納演奏の前日の朝、全員で車に乗り、いざ出発。宿のすぐ近くのフェリー乗り場で、車ごとフェリーに乗り込む。目の前の向島まで、約500m?日本最短の船旅を売りにしているが、船旅というよりは、渡し船の現代版だ。隣りには自転車も歩行者も乗り込む。向かいの島に着けば、みんな横断歩道でも渡ってきたかのように、すたすたと歩いていってしまう。

 

向島は島というにはあまりに普通の地方都市の顔をしている。建物も店も、家々も、川のような海を挟んだあっちとこっちで何ら変わりはない。なんだか不思議な感覚だ。

 

向島から因島へは橋で渡る。美しいしまなみが現れる。スティーブさんは窓の外を見たまま、目を離さない。

 

西方寺さんとの約束は午後なので、すこし時間に余裕がある。因島におりて、まずは、ということで村上水軍城を訪れた。

瀬戸内海を一望できる高台に、再現された水軍城が立っている。竹の杖をつきながら、石の階段をえっちらおっちら上っていくと、どんどん視界が開けていく。水軍の頭領が見つめた海の道を思う。

 

「水軍になれますよ」という受付の女性達に勧められて、スティーブさんが兜と装束を身に着けた。驚くほどにあっていた。