おじいさん本人の検索は行き詰まってしまったので、佐島という場所のことを調べることにした。
が、情報が非常に少ない。地図を拡大したり縮小したりして、行政区分で佐島の属する町の町役場は隣りの島にあるらしい、ということがわかった。
役場のHPを発見。
とりあえず町役場に電話をしてみた
「佐島からカナダに移民した人の孫が、おじいさんの出身地にいってみたいと探しています。何か手がかりがあればと思うのですが、調べる方法はありますか?」
雲を掴むような話だとは思いつつ、とりあえず戸籍担当の部署の人に聞いてみた。
「ご本人が役場に来られて、本人とおじいさんの関係を証明できるものがあれば、除籍謄本をお見せすることはできます」
電話に出た女性はていねいに、でも事務的に答える。
ま、今のご時世、それはそうか。
戸籍謄本でなくて、除籍謄本というのがあるということを初めて知る。日本から海外へ移民したんだから日本から籍がなくなっている訳か・・・。
除籍、と言う言葉に若干の寂しさをおぼえる。
その除籍謄本でも、おじいさんの生まれた場所の住所くらいはわかるだろうか。
とはいえ、どうやって。 そもそも本人はアメリカにいるし、スティーブさんのおじいさんとスティーブさんの関係の証明って、どうすればいいんだ。
日本に暮らす私だって、自分の祖母との関係の証明をしろといわれればそれこそ戸籍謄本やら何やら揃えるためにあちこちの役場に行かなくてはならず、証明するのはひと苦労だ。
探索は早々に行き詰まってしまった。
住んでいた場所が分からないなら、せめてお墓の場所でもわかれば。。。
ふと思いついて聞いてみた。
「島にはお寺は何軒かありますか?」
ここまで絞り込めたのだ。いくつかのお寺に当たれば、お墓が見つかるかもしれない。
「佐島にお寺はひとつだけですね。お寺の過去帳でなにかわかるかもしれませんが」
ひとつだけ、と聞いて嬉しくなった。お寺がひとつしかないならば、そのお寺がスティーブさんのおじいさんの家族の菩提寺になっているかもしれない。いや、なっているにちがいない。
「お寺の名前はわかりますか?」
さらに食い下がる。
「さいほうじさんですね」
「さいほうじ?」
「西の方角の方で、西方寺」
西方極楽浄土の西方だ。ぱあっと視界が開けたような気がした。
スティーブさんをこの島のそのお寺に連れていこう。これでスティーブさんの念願の里帰りは実現できる!
それにしても私は寺の娘の孫なのに、「過去帳」ということばを初めて聞いた。なんだかわからないが、過去の記録がいろいろしてあるものなんだろう。
佐島、いったいどんな島なんだろう。
電車やバスで行ける場所なんだろうか。フェリーしかないとして、その後の移動はどうしよう。
島の中をバスが走ってたりするだろうか。
バスはなくてもタクシーがあるかな。
お寺は簡単に見つかるだろうか。
せめてどんな島なのかわかるホームページはないものか、その後も検索を続ける。
そのうちに画像検索で、佐島を旅した人のHPをみつけた。
「食堂も宿もない小さな島。隣りの島から橋を歩いて渡って到着しました」
とある。
そこに掲載されていた佐島はの写真は、草木の緑と海、晴れた空。
何の変哲もない日本の田舎の風景。
散歩道の道すがら撮って歩いた写真のようで、これといった特徴のある場所ではない。うーん、これでは何の情報もないに等しい。
でも、少しでもおじいさんの生まれた島の雰囲気が伝わればと思い、そのHPのURLを太郎に連絡する。たろうさんとスティーブさんは見知らぬ人の撮った佐島の写真を見て、おじいさんの島に思いを馳せてくれるだろうか。
このとき日本から私ができる援護はそこまでだった。